私の母は大昔は父と2人で小さな大衆食堂を営んでいた。
家のローンがあと3年というところで父が45歳で癌で他界した。その後は1人でローンを完済し、娘2人を大学まで出し、そして結婚式も挙げた。
ローン完済後は、恐らく張り詰めていた気持ちがぷつっと切れたのだろう。食堂の常連に呉服屋の女将がいて、彼女の店で着物を買うようになった。
私が結婚してドイツに渡り、帰国する度に、一時は明らかに使わないような大きな物や高価な物が増えていっていたが、関西にいる妹が時々帰ってきては、「もう買うな」と諭し、その内に諦めたようだった。
呉服屋の女将も他界したのもあって、着物道楽は終息を迎えた。
さてそんな母の次なるターゲットは娘のようで、、帰国した時に、娘は布屋で服をあつらえてもらったのだ。
そんな事はしなくても良いからと何度言っても聞かない。
もう布を買ってあるからの一点張りだ。
それが母の唯一の楽しみならば、と思って、せめて買った布が終わる迄は、こちらも何も言わないようにはしているが、私からしてみると、散財の部類に入ると思うので、正直言って気が気ではない。
今は義母の遺品である服があるし、娘も私と同様にそれを喜んで着ている。
帰国はいつも夏なので、前回作ってもらった服は今から着れる。
母の気にいるデザインは今時ではないが、娘もコンサバスタイルが好きなので、ある意味丁度良いようだ。