ちりやま日記

ドイツで子育てのあれこれ、本やドラマや動画の感想等を綴っていきます。

長電話の友。

今週のお題「引っ越し」

 

私には、『長電話の友』と呼べる女友達がいる。

彼女とは、かれこれ20年以上の付き合いになる。

当時、私はバイエルン州の小さな街に住んでいて、彼女は隣の州の某大学の学生だった。

彼女は若い頃に結婚していたが、色々あって離婚をして大学生となった。その後、ドイツに留学。私より年上の魅力的な女性で、ドイツで知り合った。

2人でくだらない話をあーだこーだと喋っていると、時間が経つのも忘れた。

 

私が今住んでいる街に引っ越してきても、この関係は続いた。

私は学生となり、彼女は大学卒業後に大学院に入学していた。

その頃の私は「子供が欲しい」、彼女は「彼氏が欲しい」を肴に何時間も喋りまくった。

夫は呆れてはいたけれど、私のストレス解消になるならと黙認してくれていた。

そうして世が更けた頃、お互いの愚痴を聞き合って励まし合って、長電話は終了となる。これが彼女との電話のいつものパターンだった。

 

おこがましくも彼女を類友と見做すようになったのは、私が娘を妊娠した時だった。

実はその頃、彼女も当時付き合っていた恋人と結婚をしたのだ。

お互いに希望が実ったねと喜びを分かち合った。

同じような時期に、自分達の願いが叶うなんて、彼女とは類友なんだろうと思った。

 

しかし残念な事に、その後に彼女は2度目の離婚をしてしまう。

彼女の場合は、自分1人でも生きていけれるから、どうしても男性が頼りなく見えてしまうのだという。ならば、結婚ではなく恋人として、同棲するような形の方が自然なのではないか。

それでも1人の女性として、子供を産みたいという気持ちがあり、妊娠の前に結婚は外せれないようだった。

現在、ドイツでは結婚よりも同棲、そして子供を出産する人が増えている。

ドイツでは離婚率は高い。

結婚前に万が一、離婚をした時の為に、既に財産分与を決める人もいる。

離婚後のゴタゴタで精神を使い果たすよりは、結婚せずに同棲するのは、余程健全という事なのだろうか。

私の知り合いでも、離婚した人が多くなってきた。

オシドリ夫婦に見えた人達であっても、血も涙もないのかと思える程の鮮やかな手口で配偶者を追い出す人もいて、ただただ驚くばかりだった。

 

『長電話の友』の彼女からも、離婚の際の大変さを聞かれていて、それでもやっぱり結婚は諦めきれない、今度こそ、本当に幸せな家庭を築きたいと言っていた。

その頃の私の目標は『引っ越し』だったので、お互いの願いが叶うと良いねと話したものだった。

 

時が過ぎ、私も仕事を始めたり、彼女も働き始めた。

流石に私が2人目を出産してから、そして彼女も本格的に仕事をするようになってからは、時間のサイクルが変わってしまい、もう滅多に電話で話せなくなってしまった。

それでも時々、なんとか時間を見つけて、お互いに話す。

そして近況報告をしている。

 

私の引越し願望は、かれこれ10年以上にもなるが、昨年の秋にようやく成就した。

その間、何軒も家を見て回ったし、何度も夫と話し合った。

流石に何年も新居を探していると、知り合いの家が売りに出されていて、うちを買わないかとの申し出もあったが、後で何かあって関係がこじれても困るから断った。

 

そんな中、偶然、不動産の家探しのHPで見付けたのが現在の家だった。

私達は新居よりも中古を探していたが、これだけは外せない幾つかの条件があり、それを満たしていた。

引っ越した家は中古であっても、前の家の持ち主がとても丁寧に住んでいて、リフォームをする必要がなかった。

この夫婦は、子供のいない自分達の生活を大事にしたい、一度しかない人生だから、自分達が好きなように生きたいので、家具を全て置いていき、海外移住を果たした。

彼等が置いていった家具はどれも壊れていないので、こだわりが全くない私達は、それをありがたく貰い受ける形となり、工夫しながら、自分達の使い勝手が良いように生活している。

また私達が今迄使っていた家具は殆どが古くて壊れていて、引越しの際に捨てなければならなかったので、彼等の家具をそのまま使う事は自分達にとっても丁度良かったのだ。

友達や親戚は全員口を揃えて「あんたはラッキーだったね」と言う。私もそう思う。

夫は今でも「自分の人生でマイホームを手にできるなんて信じられない」と言っている。それは私も同意見で、だからこそ、この喜びを噛み締めている。

 

さて、自分が引っ越した事を『長電話の友』にも話したいと思い、連絡を取った。

すると彼女から写メが送られてきた。

どうやら彼女もまた、恋人が見つかったらしい。

やっぱり類友だ。

同じ時に願いが叶う。

仲睦まじい2人の写真を見て、うっかり自分の引っ越し報告を忘れてしまった。

 

でも、まあ、、、良いや。

その内、また話ができるだろう。

 

もう長電話ができなくなってしまったけれど、いつか報告し合える日を願って。