私は娘を結婚して9年目に不妊治療で授かった。
新婚当初、私は子宮内膜症で手術をした。夫はまだ子供が欲しくなかったので、当時は私もそんなに焦らずに過ごしていた。
それから2年後に今の街に引っ越し、ドイツに来て初めてドイツ語を本格的に学び、更にこちらの大学に通うようになった。
子供がいなかったし時間が充分あったから、と書いたら怒られてしまうかもしれないが、これは本音だ。だから小さな子供を抱えながら大学生になっている人を見ると、それだけで尊敬してしまう。
とはいうものの、やっぱり子供が欲しかったので、夫と沢山話し合い、妊活を経て、いよいよ不妊治療に踏み切った。
大学を卒業する頃、やっと娘を授かれた。
誰もが反対する中、娘を妊娠中に卒業試験に挑んだ。いうならば、娘は私の口頭試験の内容を胎教に聴いていたと言っても過言ではない。
娘を出産した頃の育児法というのは、自己肯定感を高める為に、子供のやった事を認めてあげる、受け止めてあげる方が良いというものだった。
私が結婚する時に買って持ってきた育児書は若干古く、当時は「沢山褒めて育てる」のが主流だったようだ。時代によって、色々違うのだなと思ったものだ。
自己肯定感が恐ろしく低い自分の元で、果たして自己肯定感の高い子供に育つのだろうか。そんな不安もあった。
娘は36週で破水して、そのまま出産となったので、未熟児として生まれた。
なので、生後3週間目に生死を彷徨った経緯がある。
また呼吸をするのを忘れてしまう時もあり、散歩に行って、ベビーカーを覗いてみたら、無呼吸症になっていたりと、かなり長い間、気が抜けなかった。
私と夫以外には絶対に懐こうとせず、義両親に預けるなんて不可能だった。
母乳を受け付けず、生後3ヶ月でミルクっ子になった。離乳食となると手作りは食べてくれず、ベビーフードを好んで食べる我が子を見て、益々自分に自信がなくなっていった。
それはさておき。
今でも時々、就寝時に、子供のその日の良かった行動を発表している。
毎日だと本当にありきたりで、いつも同じ内容になったりするし、傍から見ると、普通なのだが、とにかく私から見て、
「良かった」
と思う事をできるだけ多く見つけて口にする。
その時に、これをしてくれて嬉しかったと感想を述べてみたり、お礼を言ったりもする。
特にどうしても怒ってしまいがちになる倅には、自分にも良い所があるんだと気付いてもらいたいという想いもある。
去年の誕生日に、娘がお返しに『今日のお母さんの良かった所』を発表してくれた。
あまり期待していなかったが、小さな事でも教えてもらえると嬉しいもので、何だかとても照れ臭かった。
たまにはこういうのも良いものだ。