倅が下校してくるなり、
「クラスメートのL君を助けなければならない」
と言ってきた。
というのも、現在、倅達は『世界の国々』の研究発表を行なっており、L君は明日が発表日なんだそうな。
しかし、彼はどうやら研究発表に必要なKarteikartenが家にないという。
Karteikartenとは、いわゆるカンニングペーパーみたいなもので、研究発表を行う際に、ポイントになる単語のみを書いて、それを見て、自分の頭で言葉を作りながら発表を進めていくのだ。
恐らく、今日、担任から、確認事項として「Karteikartenに書くんだよ」とでも言われたのだろう。(一応、事前にもらった研究発表のノウハウには書かれているのだけどね(^_^;)
それで倅に貸してくれないかと言ってきたらしい。
貸すも何も、別に返す必要はないし、余っているから、いくらか分けてあげるよ。
倅はすぐにL君を追いかけたが、時既に遅しで、何処にもいなかった。
「お母さん、電話して」
と言われたが、実はL君の連絡先を知らない。
この小学校の保護者同士とは殆ど交流がない為、連絡先リストが存在しないのだ。
あるのは保護者が入っているWhatsAppのみ。
しかし、そこでも殆どの保護者は、役員から送られてくる連絡事項を既読するのみで、積極的に参加はしない。
それでも倅の気持ちを汲んであげたくて、ない知恵を絞ってみた。
実は倅クラスは最終学年というのもあり、記念にお揃いのTシャツを作る事になった。それで、役員さんが12月に保護者全員に向けて、子供のサイズを質問してきた。
そこに、もし、L君の親が彼のサイズを書いているなら、その電話番号がL君の母親の携帯番号となる。
ビンゴ!(⌒▽⌒)
しかも、ありがたい事に、彼女は苗字まで書いてあった。
すぐに電話を入れたが、留守番機能になっていたので、そこにメッセージを入れてみた。
暫くしてから、あちらから電話がかかってきた。
理由を話すが、ドイツ語がよく分かっていない方のようで、もどかしい。
取り敢えず、研究発表の為に必要な物で、分けれるから、これから持っていこうと思う。なので住所を教えてほしいと話した。
こっちに取りにきてもらっても構わないが、私達が動く方が早い。
もし、まだ発表そのものの準備ができてないかもしれないのなら、こちらに来るのも大変だろう。
因みに、L君が倅に話した通り、Karteikartenを持っておらず、母親はその存在すら知らなかった。
一応、学校側が指定しているので、やってなかったら減点対象になってしまうかもしれなかった。
住所を教えてもらい、倅と2人で行ってきた。
意外に近い場所だったので驚いた。
苗字が分かるから、直ぐにインターフォンが押せて、L君が出てきた。
倅が10枚ほどKarteikartenが入った袋を手渡した。
それでお終い。
帰ると、L君の母親が電話してお礼を言われた。
本当はWhatsAppで住所を送りたかったそうだが、上手くいかなかったらしい。
口頭で言ってもらえただけで分かりやすい場所だったので、直ぐに解決した。
明日、L君の研究発表が上手くいったら良いね。
でも今度は、取り敢えず、うちまで来てもらってね。
そうしたら、直ぐに分けてあげれるからね。