倅が寂しそうにしながらやって来て
「お母さん、明日から学校になるのは寂しいね」
と言う。
「? バイエルンは9月12日くらいまでは休みじゃなかったかな」
と話すと、とても安心した顔をした。
夏休みが早く始まった州では、もうとっくに新年度を迎えている。
バイエルンは1番遅く夏休みとなったので、新年度開始も遅い。
ゴルバチョフさんが亡くなったとニュースで観た。
ご冥福をお祈りします。
あの時代、ゴルバチョフさんが書記長だった当時、夫はモスクワの大学に留学しており、東西ドイツの壁が崩れた知らせをモスクワで聞いた。ロシア人の教授が夫のもとにやってきて
「これから先、ドイツはどうなるか分からないから、君さえ良かったら、ここに残れるようにしてあげる」
と申し出があったらしい。
それだけ見通しが全く立たなかった程、ドイツもまた混乱の渦にあった。
一学生だったドイツ人留学生の将来を不憫に思ったのかもしれない。
結局、夫は教授の申し出を断って、留学期間を終え、ドイツに帰国した。
その数年後に、博士号取得の為、日本に留学するようになるのだが、それはまた別の話。
娘の友達のロシア人は、現在夏休みを利用して、ロシアの祖母の家に滞在しているそうで、3日後にはドイツに帰ってくるらしい。
彼女曰く、現在はロシア人が観光できない国や地域があるそうだが、観光可能な場所に行って楽しんだらしい。
そんな写真を娘に送って来ていた。
娘達は9年生になると、1年間を通して、歴史で第一次世界大戦、第二次世界大戦を学ぶ。
夏休み前の遠足も、戦争博物館に行っていた。どのように自国の戦争の歴史について教わるのか、興味がある。
何にもなかった夏休みだったけれど、そんな夏休みですら終わるのを寂しがっている倅を見て、呑気で良いなあと呆れながら、こうやって呑気でいられるのは平和だからなんだ。その平和もまた先人達からの弛まない努力のお陰なのだ。それを決して忘れてはならない、自分達もまた、それに続かなければと肝に銘じた日だった。