私は子供の頃から、金の切れ目が縁の切れ目というか、金銭の貸し借りは絶対にするなとか、判子は絶対に押すな保証人になるなとか、親から口酸っぱく言われて育ってきた。
確かに、金の貸し借りで友情が破綻するケースもある。
ドイツでも親戚の保証人になったばかりに、身を滅ぼし自殺してしまった著名人もいる。
どんなハシタ金でも金は金である。
大事にしなければならない。
そんなわけで、人から金を借りた事もなければ、貸した事もない。
もし貸してあげたとしても、翌日から「金返せ」となるので、友達は金をすぐに返すようになる。
娘も私に似て容赦ない。
一度、仲良しのスロバキア人とお茶した際に、いざ、お金を払う段階になって、彼女のお金が足りなかった。それで2人の仲だからと思い、奢ってあげたのだが、即行で銀行に行って金を返された。
そしてこんな話を聞かせてくれた。
彼女がまだオペア(外国に住み込みで子供の保育や家事をするシステム)でドイツにやって来て間もない頃、知り合ったスロバキア人が金に困っていて、絶対に返すから貸してくれと何度も頼みにくるので、貸してやった。
しかし、その金は二度と返って来なかったそうで、それ以来、絶対に金銭の貸し借りはしないと心に誓っているのだそうだ。
同じ事を、ウクライナ人の友達も言っていた。
同国民に騙されて、大金が戻って来なかったそうだ。そればかりか、教えてもらった携帯電話の番号も変えられてしまい、音信不通になっていたという。
同国民というのは、それだけでつい信用してしまいがちになってしまうんだろうな。
倅は、金銭の貸し借りには私や娘より寛大なようだ。実はそれが心配なんだよな。
倅に至っては、近所にあるガチャガチャをするのに、家から金を持ってこいと言われて、素直に従った事があった。
ガチャガチャなんて、たかが20セントだけれど、それがいつしか2ユーロに、20ユーロに、200ユーロになっていくのではないかと思うと、流石に倅のお金を当分は私が管理する事に決めてしまった。
というのも、これが初回ではなかったから。
ガチャガチャは2回目で発覚したが、その前にはPTA主催のサンドウイッチ販売の為に、毎回1ユーロを持たせて登校させていたが、面識ない違う学年の女子に
「あれ買って」
と言われ、買ってあげた事もあったらしい。多分、その子供の親は知らないだろうね。
他にも、あれを貸してくれ、これを借りたいという子供もいる。
返される事がないばかりか、嘘までつかれる。
しまいには、貸してくれからあれがほしい、これをくれに変わっていくから、遊びに来ると、こちらも
「それはできないよ」
「必ず戻せよ」
とその都度、対応する。
当然、倅も言うのだけれど、押しが弱いのか、どうも向こうが調子に乗りそうになる事が多い。
もう少し大きくなったら、奢る奢られる、というのも出てくるのかな。
子供が大きくなるにつれ、色々な問題が出てくる。
その都度、考えながら迷いながら、やっていくしかないな。