そんな冗談を言っても、弟をとても大切に想っている娘である。
「倅君が苛められたら、私がタダではおかない」
とよく言っている。
倅の11歳の誕生日に、習い事である日本の某武術の昇格試験があった。
昇格試験といっても、まだまだ初めの一歩なので、帯の色は変わらない。
以前通っていた道場で、いつの間にか試験を受けていて合格していたが、娘と同じ道場に行き出した頃、先生から
「その割には全然できていない」
と言及されてしまい、結局、最初からやり直す事にした。
以前、バイエルン州全域からやってきた青少年対象の合宿に参加した娘が
「倅君が前に行っていた道場と同じ系統の道場から来た人達は、稽古に全然ついていけないし、形も全然できてなくて呆れた」
と言っていたので、今お願いしている先生で、ある意味正解だったのかもしれない。
事実、みっちり基礎稽古をつけてくれるので、型も覚えていけている。そして体力もついてきているようだ。
家では娘が型を教えてくれたり、稽古に付き合ってくれるのも大きい。
優しい楽しいだけでは、鍛える事にはならないんだなあと痛感する。
帯の色が変わる度に、貫禄がつくようになるからか、周りから揶揄われたり苛められたりしないようになる
と、同じ武術に通わせている独日ハーフの息子さんを持つお母さんが言っていた。
現在、大学生の息子さんはその武術で有段者。最近は空手を習い始めたが、基礎ができているから昇格も早い。
他にも、ドイツ在住のトルコ系のYouTuberが小さい頃に空手だか合気道だかに通い、稽古に励み昇格していく内に苛められなくなったと語っていたから、泣き虫で苛められやすい倅にも役立ってくれたらと思う。
一度、休み時間に帽子を取られた時に武術で習った型で咄嗟に対応したら、すぐに返してもらえたらしい。
これからどんどん社会に出ていくようになるのだから、今から自分で自分を守る術を身につけておく方が良い。
始めは、倅には無理かなと思っていたが、真面目に稽古をする毎に注意される事が少なくなり、褒められる事も増えてきた。
昇格云々は重要ではないが、帯の色が変わったり筋肉がついたり物腰が変わってくると、目に見えて判断しやすくなる。
それ等全てがモチベーションになって、自分に自信が持てるようになってくれたらと願っている。