倅がまだ未就学児童で、補習校ではなく、育児サークルに行っていた時の事だ。
教室を直ぐに飛び出してしまう倅を見て、眉を顰める人は少なくなかった。特に大人しい女子のお母さんの1人は激しく反発して、ある時
「倅君とうちの娘が、来年度の補習校で同じクラスになるのが嫌だわ」
と笑いながら言われた。
因みに、この親の娘さんにも、そして他の子供にも倅は危害を加えるような事はしていない。
育児サークルでは、親が当番制で見守りにつくのだが、その時に、倅はこの人の指示に従わなかったようで、彼女曰く、「怒るばかりしていたから、きっと倅君は私の事を嫌っていると思う」だったが、当の本人は苦手意識はないようだった。
また別の人にも、こちらは当時一人っ子だった男児の親からだが、
「うちの夫が言っていたけど、倅君が飛び出したりするような問題行動を起こすのは、父親の愛情不足からだって」
と何の脈略もなしに言われた。
夫は娘がこの育児サークルに行っている時から、日本語習得の為にミュンヘンに通う事に対して、とても協力的であり、それは今でも変わらない。
確かに、帰宅時間は普通のドイツ人のサラリーマンに比べ遅いし、週末も出勤する事もあるのだが、家庭内の問題を悩んで相談したわけでもないのに、そんな事を急に話し出す彼女に対し、速攻で心の扉を閉じたのは言うまでもない。
後日、謝罪があったが、スルーした。
私はそれほど寛大な人間ではないし、別に倅はその子供と遊びたがっているわけでもないから、今でも昔と変わらず、距離を恐ろしく置いてお付き合いをしている。
その後、3ヶ月間、夫と私が交代しながら。その育児サークルで倅の加配をした。
補習校の係や当番、そして育児サークルの方の見守り当番もしながらだったので、結構忙しかった。
しかし、倅の教室を飛び出す問題行動は、育児サークルを卒会して補習校に入る頃には治っていた。
今日は、朝からずっと雪が降っていて、一向に止みそうもない。
雪となると、倅のテンションは上がるようで、早く外で遊びたいと騒いでいた。
補習校の宿題や現地校の明日の課題の一部を終わらせてから、じゃあ、外で遊べば良いよと話した。
倅は喜び勇んで下に降りて行った。
その時、昼寝をしていた夫が起きてきた。
「自分も降りて、倅と遊ぶ」
と言って、準備をして行ってしまった。
台所の窓から下を覗くと、夫と倅が前に作ってまだ溶けていなかった雪だるまを修復していた。
そんな2人を見ながら、上記に書いた昔の事を思い出していた。
私は上記の人の発言を夫には話していない。
非常に馬鹿らしいと思うからだ。
夫なりの愛情で2人の子供を育てているし、歳を重ねる毎に、倅なりのペースで成長していっている。
成長過程にある今は、何が正解なんて分かるわけがない。
事実、投薬と加配の二者択一しか選択肢がなかったのに、問題は多少あっても、どちらもなしに学校生活を送っているではないか。コロナ禍で家にいなければならないのも、幸いしているのかもしれないが。
私達は私達のペースで確実に歩んでいけば、それで良いのだ。