我が家には、物に名前をつけるという習慣がある。
私も大昔、自分のぬいぐるみ達に『キャプテン翼』の推し伽羅であった若林源三、カール・ハインツ・シュナイダーと名付けていたので、恐らく、この習慣は私からである。
その内、夫まで、ぬいぐるみに名前をつけるようになった。
ある時、娘の友達の誕生日会に呼ばれて行き、その子のクマのぬいぐるみに勝手に「ホンキートンキー」と名付け、もうホンキートンキーでしかないようにさせてしまった。
日本では妖怪を名前で縛る呪術がある。
西洋でも、エクソシストが悪魔本人に名前を言わせ、それで憑依した体から悪魔払いをする。
要するに、名前というのはそれ程の威力があるわけだ。
慣用句に 名は体を表す というのがある。
名前と実体は一致するという意味だ。
つまり、親から付けられた名前は、その由来の通りになっていくというものだ。
だから名前をつける人は、実は責任重大なのだ。
さて、我が娘は、色々な物に名前を付ける。
ぬいぐるみや玩具のみならず、壊れて使えなくなったマウス、自分の抜け落ちた髪、ゴミ、埃にまで、名前を付けるから手に負えない。そうなると何故かゴミが私に、「捨てないでくれ」と訴えてくるのだ。
これもある種の呪術というものか。
恐るべし!
しかし無慈悲な私は容赦なくゴミ箱に捨ててやるのだった。