ちりやま日記

ドイツで子育てのあれこれ、本やドラマや動画の感想等を綴っていきます。

錬金ホール。

子供等の学校には個性的な音楽の先生がいて、その筆頭に錬金先生が挙げられていた。

いつも明るく楽しげな彼は、音楽舞台関係の全ての部活動の顧問をこなし、毎年、年度末に行われる演劇部の舞台はとても好評だった。

自身もビックバンドに所属しており、学校祭でもバンド出場をして場を盛り上げていた。

 

567禍後から復活した対面授業が軌道に乗り始めた頃だった。

当時の年度末恒例の芝居の主役が567にかかり、結局その年の公演は泣く泣く中止となった。その翌年には、ミュージカルの構想があったようで、中学年以上で舞台に出たい人を募集していた。

先生からのミュージカル公演関係の知らせに、どれだけ救われた事か。

当時の私は、倅の問題行動がまた勃発したのではないかと毎日憂鬱だったのだ。

なので、それとは全く無関係な先生からの知らせは、私にとって精神的にありがたかった。

 

そんな先生はそのミュージカルを最後に、この学校を後にする。

先生は今は別のギムナジウムの校長に就任している。

 

それでも先生の功績を懐かしむ人がいるのだろう。

いつしか彼が公演に使っていた玄関ホールの壁に『錬金ホール』と書かれたシールが貼られていた。

しかし黙認する人ばかりではない。

学校は風紀を乱すとして、怒りを露わにした。そしてシールを貼った者はお咎めを受けるというお達しを学級委員を通じて行った。

この錬金ホールシールを貼った人物は数人いるらしく、皆、錬金先生が大好きな生徒だったようだ。それだけ先生の人気が伺えるが、ある生徒は思い余って、校長のドアの前にも貼って怒りを買っていた。

 

ただ思うのだが、、、

もし先生が大好きなら、先生が悲しむような事はしない方が良いのではないかな。

もうちょっと違う方向で、先生との思い出を懐かしんだり、先生への想いを表現したら良いのではないだろうか。。

彼等の将来を考えると、老婆心に心配してしまう自分がいる。