ドイツは2011年まで徴兵制度があった。
満18歳になった男子は兵役に就いていた。
西と東、そして徴兵の種類によっても期間が変わってくる。
夫は3年間の兵役に就いたらしい。
夫曰く、兵役によって、自分の人格が変わったらしい。今の温和な性格は兵役によって培われたのかどうかは定かではないが、徴兵制度がない日本から来た私にとっては、なんだか不思議な感じがする。
昔は、街でも徴兵から帰ってきた若い兵士の兄ちゃんが電車やバスに乗っているのを見かけたものだ。
徴兵制度の代わりに、福祉施設に準ずる男子もいた。
高齢の義両親の為に食事を運んでくれたり、老人ホームや障害者施設にいる人達のお世話をしたりしていた。
さて、そんな徴兵先での話。
夫と同僚が、射撃訓練前に任務につき、的がちゃんと作動するか5m遠方から射撃して確認していた時の事だ。
あろう事か、まだ終わってない内から、100m後方からうつ伏せになった状態の訓練兵が的に向かって撃ち始めたのだ。
こ、怖すぎじゃん!!!
どうやら迷彩服を着ていた為、100m先からだと見えにくかったらしいが、それにしても弾がいつ当たるとも限らない状態で、夫達はすぐさまうつ伏せになり、状況が収まるまで待つしかなかったという。
その内、1つの銃弾が的に当たり、それが跳ね返り、自分の鼻先で土に埋まってしまった。
命拾いをした記念に持って帰って、ペンダントにしてもらい保管していたのに、いつの間にか義母に捨てられていたらしい。
夫は落胆したそうだが、話を聞いた私としては、夫と義母の両方の気持ちが分かるだけに何とも言えなかった。
兵役に就いていたからというのもあってか、夫は割と戦争物の映画をよく観る。
1番好きなのは『プラトーン』で、テレビで放送される度に必ず観ている。
ドイツでもキム・フランクという歌手が、若い時にNVAという映画に出演して、ドイツ国内でちょっと話題になっていた。
こちらは徴兵制度に就いた青年達が主役の映画で、皮肉たっぷりに描いている。
ともあれ、徴兵制度が無くなったドイツなので、こういう話を時々聞かせてもらえるのは、貴重だなあと思うのである。